◎ 純資産価額方式による注意点
◆ 純資産価額方式とは? |
● 相続税法上、「取引相場のない株式」を評価する場合には、「誰が株式を取得するのか(同族株主か?、同族株主以外の株主か?)」によって、次の様に評価方式が異なってきます。 |
評価方式 | 評 価 方 法 |
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原則的評価方式 | 類似業種比準価額方式 ・ 純資産価額方式 |
特例的評価方式 | 配当還元方式 |
要 | 例えば、ある会社が課税時期に解散し、清算すると仮定した場合、 その会社の株主に分配されるべき 「正味財産の価値」 を各資産の相続税評価額を基に評価します。 これを、その会社の発行済株式数で除した 「1株当りの純資産額」 をもって、その会社の株式の評価額とする方式 |
順 | @ すべての資産、負債を 「財産評価基本通達」 によって評価します。 A 含み益に対応する清算法人税相当額を控除し、株主持ち分を算出します。 B 株主持分を発行済株式総数で除して、1株当りの純資産価額を求めます。 |
● 「純資産価額方式」 の計算式 |
1株当りの 純資産価額 | = | 相続税評価額に よる純資産価額 | − | 負債の 合計額 | − | 評価差額の 法人税相当額 (※) |
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発 行 済 株 式 数 (注) |
◆ 資産・負債の評価上の注意点は? |
通 則 | |
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資 産 科 目 | |
(1) | 繰延資産(繰延税金資産を含む)のような財産性のないものは、「相続税評価額・帳簿価額」(以下「A」という)のいずれにも計上しない |
(2) | 前払費用・仮払金等は、その内容により判断するが、費用化されるものは「A」のいずれにも計上を要しない |
(3) | 減価償却累計額・特別償却準備金・圧縮積立金又は積立金はそれぞれの帳簿価額から控除 (貸倒引当金は未だ貸倒れが発生していないので、売掛金から控除しない) |
(4) | 被相続人の死亡を保険事故として、評価会社が相続後に受取った生命保険金は「保険金請求権」として「A」のいずれにも計上する。この場合、評価会社に「保険積立金」があるときは、「A」のいずれからも除外する。 (保険差益に対する法人税等 (※) は負債に計上できる) |
(5) | 「繰越所得税額控除限度超過額」(法人が支払を受ける利子等について、源泉徴収された所得税額のうち、その事業年度の法人税から控除しきれなかった金額)は、「A」のいずれにも資産計上する。 |
(6) | 評価会社が課税時期前3年以内に取得した土地等及び建物等は、「相続税評価額」によらず、「通常の取引価額」 に基づいて評価する。 (なお、取得には、売買、新築のほか交換、買い換え、代物弁済、合併等も含まれる) |
負 債 科 目 | |
(1) | 評価会社の帳簿に負債の計上がない場合でも、課税時期以前に賦課期日のあった固定資産税の額のうち、課税時期において未払いの金額は、「A」のいずれにも負債計上できる。 |
(2) | 建設協力金は全額が控除対象、無利息の長期借入金は経済的利益を控除した金額を相続税評価額に計上 |
(3) | 課税時期の属する事業年度に係る法人税額、消費税額、事業税額、道府県民税額及び市町村民税額のうち、その事業年度開始の日から課税時期までの期間に対応する金額は、「A」のいずれにも負債計上できる。 |
(4) | 課税時期の直前に終了した事業年度の利益処分として確定した配当金額(課税時期において配当金交付の効力が発生していない場合を除く)及び役員賞与の金額のうち、課税時期において未払いのものは、「A」のいずれにも負債計上できる。 |
(5) | 被相続人の死亡により、相続人その他の者に支給することが確定した退職手当金・功労金及び社葬費用の額は、「A」のいずれにも負債計上する。 (弔慰金はダメ) |
(6) | 評価会社が相続人等に支払った弔慰金のうち、相続税法・基本通達により退職手当金とみなされる部分に限り、「A」のいずれにも負債計上できる。 |
(7) | 逆に 準備金 及び 引当金(退職給与引当金も)は、「負債の金額」から除く、退職給付債務はOK。 繰延税金負債も「負債の金額」から除く。 |
(※)保険差益に対する法人税等 (負債の部から控除) |
受取生命保険金 | − | 掛金の資産計上額 支払退職金 ・ 社葬費用 ・弔慰金の額 直前期末の繰越欠損金 | = | A | × | 42% |